今月の花(11月)南瓜
カナダの首都、オタワのダウンタウンにあるマーケット。そこには土産物や手芸品、お菓子や瓶詰などの食料品などを扱う店、そして屋外には果物や野菜を売る屋台に交じり、オレンジ色の大小のカボチャを売るスタンドがありました。購入した人たちはおばけの顔や動物や魔女などを彫り、灯りが入れられて十月末のハロウイーンの夜を飾るのでしょう。
ウリ科の南瓜には大きく分けて西洋カボチャ、日本カボチャ、ぺポカボチャの三種類があります。ハロウイーンに使うオレンジ色の南瓜はペポカボチャで他に緑や黄色、白や縞のあるものなど、形も色も大きさも様々です。食用には煮ると素麺のように実が崩れる金糸瓜(素麺かぼちゃ)、ズッキーニもその仲間です。
ポルトガル船で日本へ渡ったものがカンボジア産のものであったため、「カンボジア」という響きから「かぼちゃ」とよばれるようになったという説もある日本カボチャは、皮が黒く溝があり、料理をすると煮くずれしにくい特徴があります。
西洋カボチャは甘味が強くほくほくとした食感が好まれ、現在日本で出回っている南瓜は、明治の初期に渡来したこの種類が多く、栗南瓜もこの種類です。
夏に花が咲き秋に実る南瓜は秋の季語ですが、冬には冬至南瓜として登場します。冬至に食べれば風邪をひかないといわれ栄養面でも優れています。長く保存ができる南瓜は野菜が乏しい昔の冬には貴重なものでした。現在では南半球のニュージーランド産のものが多く輸入されています。
南瓜はズッキーニに代表されるように黄色い花を食べたり、スープやお菓子にしたりと様々な用途があります。オーストリアの都市、グラーツに行った時も隣国スロヴェニアまで足を伸ばし、カボチャオイルを絞る工場に連れて行っていただき帰りに炒りたての香ばしい種をお土産にいただきました。その南瓜にはかすかに縞があるのですがこれもペポカボチャの一種でしょうか。
ところでこのオタワの市場に来た理由は、この街の花屋さんや花市場には日本に比べて枝や花の種類が少なく、代わりの花材になるようなものを求めて訪れたのでした。早速個性的なペポカボチャの中から鶴首南瓜を手に入れました。かなりの重さがあり、デモンストレーションの舞台ではバランスを見ながら鉄の花器に紅葉した楓と黄色いガーベラ、モカラという蘭といけました。この南瓜が登場したとき、300人の観客の皆さんのオヤ?という反応があり、やがてすぐに笑いが広がっていきました。
「シンデレラ」の物語にも南瓜の馬車が登場しますが、さてそれはどの種類の南瓜だったのでしょうか。
その多様な色と姿に、作品のイメージも食欲も想像力をも掻き立てられる南瓜なのです。(光加)